女性の自閉スペクトラム症:見過ごされる理由と男性との違い
自閉スペクトラム症の女性や女の子は、なぜ診断されにくく、診断が遅れがちなのか。マスキングが特性を隠す仕組みと、役に立つことを紹介します。
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気のせいではありません
自閉症についての記事を読んでいて、その半分に自分の姿を見つけたことはありませんか。学校時代を振り返ると、必死に覚えたルールや、まねをしていた友だちの顔が浮かんできます。そして、なぜ誰もその言葉を自分にかけてくれなかったのだろう、と思うのです。自閉スペクトラム症の女性の多くが、同じ問いを抱えています。20代や30代、あるいはもっと後になってから気づく人も少なくありません。
自閉症は、人との関わりや感覚からの情報、変化をどう受け止めるかにかかわる、生涯続く違いです。何十年ものあいだ、自閉症は男の子に起きるものだと思われてきました。では、診断の男女差は実際にどのくらいなのでしょうか。女性や女の子はなぜ見過ごされ、女性では自閉症がどう違って見えることがあるのでしょうか。そして、何が役に立つのでしょうか。
自閉症の診断の男女差はどのくらいか
男女差は確かにあります。ただし、その大きさは、どれだけ丁寧に探すかで変わります。2万3,000人以上を対象にした20件の研究をまとめたシステマティックレビューによると、メタ分析での男女比はおよそ3対1でした。ところが、徹底的に該当者を探し出した集団調査では、およそ1.8対1まで下がります。
- メタ分析
- 3:1
- 徹底的に該当者を探した集団調査
- 1.8:1
集団全体を丁寧に調べると、通常の診断で見つかるよりも多くの自閉スペクトラム症の女の子が見つかります。同じレビューは、女性の自閉症は十分に認識されていないと結論づけています。そして、自閉症を「男の子の障害」とみなす見方が、最初に心配を抱く段階から最終的な評価に至るまで、あらゆる段階で壁になっていると指摘しています。
なぜ女性や女の子は見過ごされ、診断が遅れるのか
このレビューは、見えてきた主な壁として、カモフラージュ、親の心配のあり方、周囲の受け止め方、臨床家の偏りを挙げています。ただし、そうした見方の多くは、臨床家や教師、自閉スペクトラム症の当事者ではなく、親から寄せられたものでした。 とくに目立つのは、次のような傾向です。
- 紹介される機会が少ない:レビューで引用されたある研究では、評価のために紹介される割合が、男の子は女の子の約10倍でした。
- 親が気にかける点が違う:限定的・反復的な行動について心配を口にした親は、男の子の親のほうが女の子の親の1.74倍多くいました。
- 女の子のほうがハードルが高い:女の子は、行動面や言葉の面でさらに別の困りごとがないと、診断の基準に届かないことがよくありました。男の子には、こうした傾向は見られませんでした。
- 先に別の診断がつく:いくつかの研究では、女の子が自閉症より先に別の診断を受けていました。そのせいで、正しい診断が遅れた可能性があります。
ツールそのものにも問題があります。スコットランドの支援機関で使われている自閉症の診断ツール7種類を調べたレビューがあります。それによると、自閉スペクトラム症の人に占める女性の割合の英国の推計と比べて、ツールの検証に使われたサンプルでは女性や女の子が少なすぎることがわかりました。著者は、そのせいでツールが女性に現れる自閉症をとらえにくくなっているかもしれないと結論づけています。
自閉スペクトラム症の女性たちも、同じ歴史を当事者の立場から語っています。ニュースレター「Ask an Autist」を書く自閉スペクトラム症のライター、Mette Marie Ivieは、自閉症は「もともと幼い男の子にしか見られないもの」とされてきたため、女性の特性は取り合ってもらえないと言います。彼女の言葉を借りれば、「私たち自閉症の女の子は見過ごされ、無視されてきた」のです。
子どものころに見過ごされると、診断が遅れるか、診断されないままになることがよくあります。 レビューで引用された研究によると、5歳以上で診断された女の子は、男の子より約12か月遅く診断を受けていました。当時アスペルガー症候群と呼ばれていた診断でも、女の子は男の子より約1.8年遅く見つかっていました。
大人の場合、その遅れが何年にも及ぶことがあります。ジャーナリストで作家のMarianne Eloiseは、評価を受けようと約5年間試み続け、27歳で診断されました。以前かかった医師には、おそらく自閉症だろうと言われたものの、待機リストが長すぎて評価を受ける価値はないと告げられたそうです。最終的に彼女は自費で民間の評価を受け、3日間にわたって数時間ずつ検査を受けました。
Ivieによると、多くの女性の診断が遅れるのは先に別の状態が見つかるからです。女性によっては、自閉的な特性が虐待のせいにされ、その奥にある自閉症の発見が遅れることもあるといいます。1980年代や1990年代に育った女の子は、そもそも診断の対象として考えられていなかったとも話しています。
女性や女の子のマスキングはどう見えるのか
マスキング(カモフラージュとも呼ばれます)とは、周囲に合わせて自分を隠すこと、つまり溶け込むために自閉的な特性を隠すことです。 ニュースレター「Overthink Tank」を書く自閉スペクトラム症のライター、Chelsey Floodは、女性や女の子はとくにマスキングをしやすく、しかも本人が気づいていないことが多いと指摘しています。人に合わせ、自分で自分を律するように育てられるからです。
Floodは、自分自身にも当てはまると気づいたやり方を挙げています。
- 人づきあいに自信のある人のそばにいて、その人を観察しながら暗黙のルールを覚える。
- うなずいて黙っていることで、障害があるのではなく内気なのだと思ってもらう。彼女のルールは「迷ったら、黙ってうなずく」でした。
女の子では自閉症がどう違って見えるのか
特性はあっても、周りの人が別の名前をつけてしまうことがよくあります。Eloiseによると、学校での彼女の振る舞いは授業妨害や反抗と受け取られ、特別な関心はファン活動、整理整頓や人間関係の難しさは怠けだとみなされました。
| 実際にあったもの | よくある受け取られ方 |
|---|---|
| 強い特別な関心 | ファン活動、一時的なブーム、趣味 |
| 整理整頓の難しさ | 怠け |
| 観察やまねで隠された人づきあいの難しさ | 内気 |
| 学校での苦しさとそこから来る行動 | 授業妨害や反抗 |
では、女の子と男の子は根っこのところで本当に違うのでしょうか。エビデンスは一致していません。 レビューでは、社会的コミュニケーションに男女差があるかどうかについて、はっきりした答えは得られませんでした。差は思春期になると小さくなるようでした。10代になって人づきあいの要求が増えるにつれ、マスキングがうまく働かなくなるからかもしれません。
自閉症は何と間違われ、見過ごされると何を失うのか
自閉症が見過ごされても、マスキングの負担はやはり表に出てきます。そして多くの場合、別の名前で呼ばれます。Estia Centreによると、マスキングをしている自閉スペクトラム症の女性は、次のような診断を受けることがよくあります。
- 全般性不安
- うつ病
- 情緒不安定性パーソナリティ障害
- 摂食障害
これらはマスキングから二次的に生じている可能性がある、つまり隠し続ける負担から引き起こされることがある、とこのページは指摘しています。
長くマスキングを続けることは、**自閉症バーンアウト(autistic burnout)**とも結びついています。Estia Centreはこれを、深刻な疲労、一時的または長期的なスキルの喪失、そして感覚過敏がはるかに強まる状態だと説明しています。 同じページでは、マスキングと自殺リスクの高まりとの関連にも触れています。
診断を受けるまでの過程そのものが、人を傷つけることもあります。Eloiseはそれを「ときに人間扱いされない、過酷なもの」と表現しています。それでも、診断は彼女に「確かさと揺るぎなさ、そして自分のニーズを言葉にする力」を与えてくれたと言います。そして、自閉症であることを「ただ大丈夫なだけでなく、良いこと」だと考えるようになりました。
役に立つこと
1. 評価を受ける
Floodは、女性に現れる自閉症について調べ始めてから約6か月後、37歳のときに、経験豊富な臨床精神科医から自閉症と診断されました。
2. マスキングを減らす
Floodは、負担を軽くする小さな工夫を提案しています。
- 答えたり決めたりする前に、考える時間をもっと求める。
- できる範囲で、自分に合った環境を選ぶ。
- 負担の大きい日のあとは、回復の時間をとる。
- 耳栓やアイマスク、加重ブランケットなどの感覚のための道具を使う。
境界線を引くことにも触れ、「どうやら『ノー』は、それだけで一文として成り立つらしい」と書いています。
3. ほかの自閉スペクトラム症の女性とつながる
Estia Centreによると、ほかの自閉スペクトラム症の女性とつながると、経験を分かち合い、本当の自分としての自閉的なアイデンティティを築いていきやすくなります。
4. 職場でマスキングを減らす調整を求める
パートナー、家族、臨床家の方へ
- 見た目で判断しない:どれだけ落ち着いて見えるかではなく、その人が内側で抱えている苦しさに目を向ける。
- 感覚や人づきあいのニーズを認める。ささいなこととして扱わない。
- 人と関わったあとは、回復の時間を確保する。
- マスクを外せる場所をつくる。人目を気にせず、スティミングをしたり、自分のやり方でコミュニケーションをとったりできるようにする。
もっと学びたい臨床家は、Estia Centreの研修「Module 1: Autism and Women」を調べてみるとよいでしょう。2026年1月の開催で、定員に限りがあると案内されていました。 まだ申し込めるかどうか確認してください。
助けを求めるべきとき
Estia Centreは、マスキングの代償が大きくなりすぎているサインとして、次のものを挙げています。
- 深刻な疲労
- 話すことや日常の作業、マスクを保ち続ける力などのスキルの喪失
- 感覚過敏の高まり
- 緊張型頭痛や身体の疲れ切った状態など、ストレスに関連した身体の不調
- メルトダウン(meltdown)やシャットダウン(shutdown)
まとめと参考情報
自閉症と診断される女性が少ないのは、ひとつには、ツールや紹介の流れ、周囲の想定が形づくられる際に、女の子が自閉症の典型として思い描かれてこなかったからです。マスキングが特性を隠し、先に別の診断がつき、研究者が丁寧に探すと男女差は縮まります。役に立つのは、回復のための時間、話ができるほかの自閉スペクトラム症の女性、そしてマスキングを減らすための調整です。
- Estia Centre:女性と女の子の自閉症のマスキング(新しいタブで開きます)
マスキング、バーンアウト、支援について解説したNHSの記事です。
英国
- Chelsey Flood:マスキングとは何か、どうすればやめられるのか(新しいタブで開きます)
自閉スペクトラム症のライターが、マスキングとそれを外すことについて書いています。
自閉スペクトラム症の当事者が主導
- Mette Marie Ivie:大人になってから診断された自閉スペクトラム症の女性たち(新しいタブで開きます)
ニュースレター「Ask an Autist」の記事です。
自閉スペクトラム症の当事者が主導
- Marianne Eloise:私は自閉症。27歳になるまで知らなかった(新しいタブで開きます)
大人になってからの診断について綴った個人的なエッセイです。
自閉スペクトラム症の当事者が主導
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出典 (7)
- Lockwood Estrin, G., Milner, V., Spain, D., Happé, F., & Colvert, E. (2021). Barriers to autism spectrum disorder diagnosis for young women and girls: a systematic review. Review Journal of Autism and Developmental Disorders.
- Murphy Lonergan, R. (2021). Gender balance in the validation of diagnostic tools for autism: a systematic review. European Psychiatry, 64 (suppl 1), S599.
- Eloise, M. (2020). I'm Autistic. I Didn't Know Until I Was 27. Gulf News (republished from The New York Times).
- Ivie, M. M. Late Diagnosed Women With Autism. Substack, Ask an Autist.
- Flood, C. What Is Masking and How Can We Stop? Substack, Overthink Tank.
- South London and Maudsley NHS Foundation Trust, Estia Centre. Autistic Masking in Women and Girls. SLaM blog.
- South London and Maudsley NHS Foundation Trust. Estia Module 1: Autism and Women. Course page.
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