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二重共感問題:自閉症の人の対人関係の難しさは双方向で起きている

二重共感問題とは何か。研究で何がわかっていて、自閉スペクトラム症の人や家族、臨床家、職場にとって何が変わるのか。

Ownminded公開 16 分で読めます

気のせいではありません

わかりやすく説明したつもりなのに、相手にはまったく別の意味で伝わってしまう。失礼だとか冷たいとか言われても、自分ではそんなつもりはまったくない。ところが別の自閉症の人と話すと、会話がすんなり流れていく。このパターンに身に覚えがある自閉症の人もいるでしょう。

これまでよく語られてきたのは、自閉症の人には共感する力がない、他人の心が読めない、という説明でした。二重共感問題は、もっと公平な見方を示しています。それはどんな考え方なのか。研究はどこまで裏づけ、どこから先はまだ裏づけていないのか。そして毎日の暮らしにとって、どんな意味があるのでしょうか。

二重共感問題とは

二重共感問題を2012年に打ち出したのは、自閉スペクトラム症当事者の研究者で、ケント大学の講師でもあるDamian Miltonです。自閉症の人とそうでない人のあいだでコミュニケーションがうまくいかないとき、その原因は自閉症の人だけにあるのではなく、双方にある、という考え方です。

National Autistic Societyはこれを、コミュニケーションや共感の難しさはお互いさまだとする理論だと説明しています。どちらの側も相手を理解しにくいことがあり、問題は自閉的な考え方だけから生まれるわけではないというのです。 主な特徴は次のとおりです。

Miltonによると、この考え方は自閉症の人たちが長く語ってきたことと一致します。「理論として、当事者の語りから見えてくる自閉的な現象学と合っている」。ここでいう現象学とは、本人が一人称で生きている経験のことです。

なぜすれ違いが起きるのか

従来の見方の土台にあるのは、「心の理論」です。他人が何を考え、何を感じているかを推し量る力のことを指します。欠陥モデルによれば、自閉症の人はこれが苦手なので、対人関係の問題は自閉症の人の側から始まることになります。National Autistic Societyの記事は、こうした説明はせいぜい部分的な説明にしかならないと指摘しています。

二重共感の見方は、そこにもう一方の側を加えます。自閉症でない人にも見落としがあるのです。自閉症の人の表情や心の状態を読み違えたり、第一印象で悪く受け取ったりすることがあります。

Autism: an inside-out approach の著者Donna Williamsは、1996年に従来の見方の問題点をこう言い表しました。自閉症は「外側から、見た目で判断されてきた。内側からではなく」。

これは、すべての自閉症の人が同じようにコミュニケーションをとるという意味でも、自閉症の人が人づきあいに苦労しないという意味でもありません。苦労している人はたくさんいます。大切なのは、会話の難しさは双方で分かち合うものだという点です。原因を一人だけに求めることはできません。

研究で何がわかっているのか

この考え方は当事者の経験から生まれ、その後いくつかの方法で検証されてきました。

自閉症でない人は自閉症の人をどう見ているか

Sheppardらのグループ、Heasman、Sassonによる実験研究では、自閉症でない人は自閉症の参加者の感情を読み取るのに苦労したり、第一印象で悪く受け取ったりしていました。

同じタイプどうしのペアと、混合ペアのラポール

ラポールとは、会話がうまく運び、相手と息が合っていると感じられる感覚のことです。大人72人を対象にした2020年の研究では、同じタイプどうしのペア(どちらも自閉症、またはどちらも自閉症でない)が自分たちのラポールにつけた点数は、500点満点で平均407.1点でした。混合ペアは351.3点です。

この研究の第2部では、78人の観察者が会話の動画を見て評価しました。平均点は、自閉症どうしのペアが364.25点、自閉症でない人どうしのペアが331.99点、混合ペアが275.43点でした。もっとも低く評価されたのは混合ペアで、同じタイプどうしのどちらのペアよりも下でした。

ペアの種類別に見た、観察者によるラポール評価(500点満点)
自閉症どうしのペア
364.3
自閉症でない人どうしのペア
332
混合ペア
275.4
観察者78人2020

研究者たちは、「自閉症の人は、ほかの自閉症の人とやりとりするとき、高いラポールを感じている」と書いています。

情報の伝わり方

伝言ゲーム形式の研究では、8人の自閉症の人がつないだメッセージは、8人の自閉症でない人がつないだメッセージと同じくらい正確に保たれていました。メッセージがすぐに崩れたのは、混合のチェーンだけでした。

2025年には、311人が参加した登録報告(データを集める前に方法を審査し、確定させておく研究)がこの点を検証しました。同じタイプどうしのチェーンと混合チェーンのあいだで情報の伝わり方に差は見られず、予測は裏づけられませんでした。 同じ研究では、自閉症でない人どうしのチェーンが、より高いラポールを報告しています。チェーンのメンバーの診断の内訳を伝えると、ラポールが高まることもわかりました。

検証された問い 研究でわかったこと
自閉症でない人は自閉症の人を正しく読み取れるか できないことが多い。感情を読み違え、第一印象で悪く受け取る
同じタイプどうしのペアは混合ペアよりラポールが高いか 2020年の研究では、自己評価でも観察者評価でも高かった
もっともラポールが高いのは誰か 研究による。2020年の自己評価では自閉症でない人どうしのペア、2020年の観察者評価では自閉症どうしのペア、2025年では自閉症でない人どうしのチェーン
混合グループでは情報が伝わりにくいか 伝言ゲーム形式の研究では伝わりにくかった。2025年の登録報告では差がなかった
診断を開示すると役に立つか 2025年の研究ではラポールが高まった

どこまで確かなのか

根拠は心強いものの、まだ十分に強いとはいえません。 The Transmitterは「まだ盤石ではない」と述べ、多くが体験談や小規模な研究に頼っていると指摘しています。

2020年のラポール研究は、自らの限界として次の点を挙げています。

この研究の2つのパートの結果も食い違っていました。自己評価では自閉症でない人どうしのペアがもっとも高く、観察者は自閉症どうしのペアをもっとも高く評価したのです。 2025年の研究の著者たちは、以前の研究と結果が異なる理由として、参加者の多様さや方法の違いが考えられるとしています。

「自閉症の人には共感力がない」という見方とどう違うのか

欠陥モデルと二重共感の見方
観点欠陥モデル二重共感の見方
問題がどこにあるか自閉症の人の中人と人とのやりとりの中
理解に苦労しているのは誰か自閉症の人双方
主な説明心の理論の障害お互いを理解することの難しさ
変わることを求められるのは誰か主に自閉症の人関わる人全員
自閉症をどう判断するか外側から、見た目で当事者の語りも含めて

この違いが重要なのは、誰がその負担を背負うかが変わるからです。Miltonは、評価や治療の場で「多くの場合、変わることを求められるのは自閉症の人だけだ」と指摘しています。

毎日の暮らしにとってなぜ大切なのか

National Autistic Societyによると、誤解や偏見は心の健康、仕事、教育、サービス、そして刑事司法制度での経験にまで影響を及ぼすことがあります。

自閉スペクトラム症の大人たちも、同じことを語っています。2022年の研究では、22〜65歳の自閉症の大人25人が、誤解は人生のあらゆる場面でよく起きてきたと話しました。誤解は生活のすべての領域に及び、心の健康にも深刻な結果をもたらしていました。自閉症でない人たちの社会に受け入れられることは、めったになかったといいます。

役に立つこと

自閉スペクトラム症の大人へ

  1. 誤解はお互いさまだと考えましょう。 会話がうまくいかなかったからといって、あなたに共感力がない証拠にはなりません。自閉症でない人も、自閉症の人を読み違えるのです。
  2. ほかの自閉症の人と過ごす時間をもちましょう。 多くの自閉症の人が、自閉症の人どうしだとつながりやすく、ラポールが深まり、自分のことも話しやすいと語っています。
  3. 安心できる場面なら、開示を考えてみましょう。 2025年の研究では、グループの診断の内訳がわかるとラポールが高まりました。 開示するかどうかは、あなた自身が決めることです。
  4. 確信がもてないなら、評価を受けることも考えましょう。 たとえば英国NHSのケンブリッジシャー・ピーターバラ地域では、まずかかりつけ医(GP)に相談し、GPから紹介してもらう流れになっています。この地域の成人向けクリニックは、本人からの直接の申し込みを受け付けていません。

家族へ

臨床家へ

職場へ

まとめ

二重共感問題は、自閉症の人とそうでない人のあいだの対人関係の難しさが、双方向で起きていると考えます。研究はその一部を裏づけています。自閉症でない人は自閉症の人を読み違えることが多く、同じタイプどうしのペアは強いラポールを築けます。一方で、グループ間で情報が失われるといった点については、まだ結論が出ていません。実際の場面でこの考え方が意味するのは、自閉症の人にすべてを任せるのではなく、理解するための努力を分かち合うことです。

参考情報

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出典 (8)
  1. National Autistic Society (n.d.). The double empathy problem. National Autistic Society.
  2. Crompton, C. J., Sharp, M., Axbey, H., Fletcher-Watson, S., Flynn, E. G., & Ropar, D. (2020). Neurotype-Matching, but Not Being Autistic, Influences Self and Observer Ratings of Interpersonal Rapport. Frontiers in Psychology, 11:586171.
  3. Crompton, C. J., Foster, S. J., Wilks, C. E. H., Dodd, M., Efthimiou, T., Ropar, D., Sasson, N. J., Lages, M., & Fletcher-Watson, S. (2025). Information transfer within and between autistic and non-autistic people: a registered report. Nature Human Behaviour, 9(7), 1488-1500.
  4. The Transmitter (n.d.). Double empathy, explained. The Transmitter.
  5. Camus, Macmillan, Rajendran & Stewart (2022). I too, need to belong: Autistic adults' perspectives on misunderstandings and well-being. Preprint, Center for Open Science.
  6. Pensive Creature (2022). Dear Autism Professionals: We Aren't 'Mind-Blind.' Substack.
  7. University of Sheffield (SHARL) (n.d.). Autism in the Workplace: Resources and Guidance. University of Sheffield.
  8. Cambridgeshire and Peterborough NHS Foundation Trust (n.d.). I think I may be autistic. CPFT.

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